書評:「生涯投資家 村上世彰」は、投資と教育の視点から最高に優れた本でした

1 はじめに

著者は、村上ファンドを立ち上げたファンドマネージャーです。
東京スタイル、日本放送、阪神鉄道等に対する物言う株主として、当時は、連日、ニュースで報道されました。
本書を読むきっかけは、過去に投資で大儲けした著者の思考が知りたかったためですが、良書であるため、書評として、取りまとめました。

2 著者の概要

本書より、著者の概要を以下に引用します。

「村上世彰(むらかみ・よしあき)
1959年大阪府生まれ。1983年から、通産省などにおいて16年強、国家公務員として勤める。1999年から2006年までファドを運営。現在シンガポール在住の投資家」

3 本書が優れている点

3.1 親から子供への教育は、非常に重要であることを再認識できる

著者の父は、著者に様々な投資家としての英才教育をした。著者の名義で株式を買い続けたり、投資哲学まで、著者に教えた。さらに、香港フラワーを作る会社への投資では、著者を香港の現地の工場に連れていき、本稿フラワーの工場を著者に見せた。
さらに、父のカバン持ちとして、ハワイ、ロサンゼルス、ニューオーリンズ、コスタリカ、エルサルバドル、メキシコシティ、ニューヨークを3週間かけて旅行して、投資案件の打ち合わせや視察に同行させた。

このようなグローバルな投資の実態を父からの教えてもらえる環境は、羨ましいです。
著者の学生時代は約40年前なので、このような投資の超英才教育を子供にできる父は、凄すぎです。

3.2 子供が職業を選択する際は、親の影響は大きい1事例

前述のとおり、著者の父はグローバルな投資家であり、著者は、投資家の基本的な考え方をすべて父が学んだ。

著者が投資家になった影響は、父親の存在が大きかった。
著者の長女も父を追うように投資家となり、さらに、著者の長男もIT関連企業のベンチャー投資家である。

ことわざで、”親の背を見て子は育つ”と言いますが、まさに、村上家には、このことわざが当てはまります。

3.3 過去の村上ファンドの事件の振り返りとして非常にわかりやすい

著者が逮捕されたのは、2006年であるため、今から10年以上前のため、随分前の出来事です。

当時、連日テレビで報道されていたため、著者は法を犯したため、逮捕されたと思っていました。

しかし、著者の主張を読む限り、著者は、無罪であるとも読み取れます。

村上ファンドの事件は、個人的に非常に興味深いので、時間があるときに、他の参考文献も読んでみようと思います。

3.4 人に指示されるのが嫌いで自分のやりたい事を最優先する一貫した行動に感動

著者は、人一倍、信念が強いです。

経済産業省を退任後、著者は投資家になるための資金集めに苦労した。その際、「オリックスの社内にファンドを作って、コーポレート・ガバナンスの取り組みを一緒にやろう」と非常に魅力的な提案を断った。

著者の思いは以下の通りである。
「独立後は誰の指示も受けず、自分の思い描くように理想を追求したい気持ちが強かった。オリックスの従業員になって、会社の指示でファンドを運営することには抵抗があった。」

以上より、著者の一切の妥協を許さない信念の強さを感じました。

3.5 過去の経済産業省の職場に関する不平や不満を表現しない

本書では、過去の経済産業省の勤務時代の不平や不満は感じられない。

本当に主張したいことは、資金を循環させて、日本の株式市場の価値を高めることであり、著者の意見に共感できます.

本書のように、過去の職場の悪口を全く書かないところに、著者の大人の対応を感じるとことができます。
さすが元官僚です。

3.6 残念であるが、出る杭は打たれてしまった

著者は、村上ファンド時代に大儲けをしてしまったため、多くの人から反感を買ってしまったのだと思います。

投資の天才としての出る杭は、残念ですが、打たれてしました。

3.7 日本の株式市場の問題点が良く分かる

著者の意見には、全面的に賛成です。国内上場企業は、使い道を明らかにしない手元資金を社内に持ちすぎです。

著者の主張は、一貫して、資金の循環による経済成長です。

仮に、著者の言う通り、株主還元や積極的な投資をするならば、我が国の景気は上昇して、株価も上がるであろう。

3.8 本書を執筆した理由が理解できた

著者が本書を執筆した理由として、2015年の著者の事務所への強制捜査が挙げられる。強制捜査のストレスにより著者の長女は流産してしまったと非常に悲しい出来事があった。

このような背景に著者は、「私自身が表に立って自分の理念や信念をきちんと伝えなければならないと思い始めたのだ。」と記載している。

本書により、著者の意見を広く一般に広めたいのですね。

3.9 NPO法人の現状の問題点が良く分かる

NPO法人の最大の課題は、長期的な資金の確保だそうです。NPOの課題について、東日本大震災などの実体験を踏まえた考察は大変参考になりました。

3.10 文章が読みやすく、投資の初心者でも解り易い

全体的に、文章が上手で、難解な投資に関する説明も易しいです。

著者は官僚時代の経験から、文章を書くことは、慣れていると思ます。

著者の文章は、非常に知的で、洗練されています。

4 本書の課題

4.1 文字数の多さ

著者の自伝のため、どうしても文字数が多くなってしまうのは、仕方がないです。

ページ数は276文字であり、比較的小さめの文字で、ページ当たりの文字数も多いです。

文字が多いため、村上ファンド時代の状況が解り易い利点もあります。

4.2 内容が濃いため、飛ばし読みができない

一般的な金融関係の本は、他の本でも同じようなことが記載されているため、読み飛ばしが可能であることが多いです。

例えば、多くの金融の本では、投資の歴史を説明する際に、1600年代のオランダにおけるチューリップバブルについて、説明されています。

そのような一般的な記述は何度も読んでいるため、読み飛ばしが可能です。

本書の場合、著者自身の体験や信念の記述が非常に多いため、ほとんど、読み飛ばしができません。

4.3 読書時間の確保が必要

上記の理由により、本書を読破するためには、数時間の読書時間の確保が必要です。

5 おわりに

感動しました。
これほど素晴らしい本は、無いでしょう。
時間があるときに、再度読みたいです。

それでは~

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